いののすけのブログ

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百合作品探究その1~『エクレア あなたに響く百合アンソロジー』~

 自分の好きな、あるいは気になった百合作品の感想に言及しながら、百合について考えていきたいと思っています。最初はKADOKAWAより刊行されている『エクレア あなたに響く百合アンソロジー』です。(以下ネタバレを含みます)

 

 まずは作品の概要です。『エクレア あなたに響く百合アンソロジー』はその名の通り百合作品のみを集めたアンソロジーです。KADOKAWAより刊行されており、2016年から2019年の間に5巻が刊行されています。百合という以外には統一されたテーマもなく、多種多様な百合作品が収録されています。

 

 一通り読んでみてまず思ったのは、百合というものの多様性です。百合作品は大前提として女性同士の関係性というところから出発していますが、それでも恋愛というだけではなく、ほかの人とは違う特別な友情などの恋愛まではいかない感情までも包摂しています。また学生同士から会社の先輩・後輩など関係も多様です。その中でそれぞれに違った感情の表現や好意の発露の仕方があり、自由度が高いと感じています。この多様性による自由度こそが百合の魅力の一端であり、本アンソロジーではそのあたりを存分に味わうことができました。

 

 以下ではいくつか印象に残った作品を取り上げます。(以下はシリーズ、作家、作品名、ページ数はKADOKAWA刊『エクレア あなたに響く百合アンソロジー』に依拠しています。)

 

 1.唯野影吉『GAME OVER』(無印、p.165)

 この作品は山奥の廃墟で世界滅亡ごっこをする二人を描いた作品です。廃墟というエモさを感じる場所でいちゃいちゃする女子二人とかもう言葉抜きで最高じゃないか、ということを感じた作品でした。

 

 2.カボちゃ『もう夏は来ないけれど』(blanche、p.131)

 この作品は優秀な姉に対しコンプレックスを抱いている女子が、一緒にいると居心地がいい先輩と過ごす夏を描いた作品です。姉妹コンプレックスという側面と、そんな感情を持つ自分を肯定してくれる先輩に思いを伝える場面にグッとときました。

 

 3.北尾タキ『サトと泪と女と女』(bleue、p.205) 『レジェンドと新人と私』(rouge、p.189)

 これらは職場の先輩・後輩を描いた作品です。どちらも競い合うライバル関係がみられること、後輩のほうが積極的であることなど自分の性癖に刺さる要素が多く、とても楽しく読みました。

 

4.あらた伊里「ティアドロップス」(orange、p.51)

 この作品は年齢が低いことにコンプレックスを持つ女の子と、年上だけど幼く見える女子の話です。年上だということがわかったあと、年下のふりをしていたのは甘えたいからという種明かしがされ、年下に甘える甘えんぼな年上とか最高じゃないかと、新たな性癖を開拓した作品でした。

 

 『エクレア あなたに響く百合アンソロジー』を読んで、多様な百合作品に触れ、自分の好きなものを再確認したり、新たな好きを発見したりできました。そういった意味でも百合への導入として素晴らしいアンソロジーだなと思いました。

 

 次回は『百合ドリル』の予定です。