いののすけのブログ

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少女漫画感想2~咲坂伊緒『ストロボ・エッジ』~

 少女漫画の感想を述べていくシリーズ。今回は咲坂伊緒先生の『ストロボ・エッジ』です。(以下ネタバレを含みます。)

 

 まずは作品の概要です。『ストロボ・エッジ』は別冊マーガレット平成19年7月号から平成22年9月号にかけて連載された、咲坂伊緒先生の初の長編連載作品です。物語は初めて恋をした仁菜子とその相手である蓮、そして仁菜子に恋をする安堂の3人を中心に展開されていきます。

 

 前回短編集の感想でも触れたところではありますが、やはり付き合うまでの葛藤する時間や思いがすれ違う場面での表現が秀逸だなと感じました。この3人の間でもそうですが、そのほかの登場人物との関係性の中でも、それぞれ気持ちが揺れ動き、葛藤する中で物語が展開していきます。そのなかで登場するモノローグやコマ割りはやはり印象に残るものがあり、この作品の好きなところになっています。

 ただ『ストロボ・エッジ』を好きな理由は、その導入の素晴らしさにもあると感じています。1話から4話までで仁菜子が蓮を好きになり、初恋を自覚し、そして告白するまでが描かれます。この部分では、些細ながらいくつかのきっかけの積み重ねで恋に気づいて、世界が変わって見えるといったうれしさ、相手に彼女がいると知って、それでも自分の気持ちを大事にしたいと感じ、そこから生じる切なさといったものが情緒たっぷりに描かれています。この導入があるからこそ、その後の蓮を忘れたいけど忘れられないといった苦しさや、安堂のやさしさに触れて揺らめく気持ちといった描写が際立ち、作品の印象がより強いものになっています。この導入部分も自分が『ストロボ・エッジ』を好きな理由です。

 

 以下では印象に残る場面をいくつか述べてみたいと思います。(以下巻数と話数は集英社刊『ストロボ・エッジ』より参照)

 1.「秋と冬の匂いが丁度半分になった!」(3巻、第11話)

 仁菜子と蓮、安堂の3人がバイト終わりの帰り道で蓮の彼女である麻由香と遭遇し、一緒に帰る場面です。蓮も匂いを嗅ぎながら「半分だ」とつぶやいているところに、仁菜子が上記の言葉を叫びます。ちょっとしたことながら二人にしか共有できない感覚というものが垣間見え、思わずドキッとしてしまいました。

 

 2.「つかまえた」(6巻、第20話)

 木に挟まった猫を助けたら自分の髪が木に引っ掛かり、身動きが取れなくなった仁菜子に対し、その猫を追ってきた蓮が不意に抱き着く場面です。突然の密着とそのあとも髪をほどく間に続く接近に、ドキドキが止まりませんでした。

 

3.「答えるまで帰さない」(9巻、第34話)

 安堂への後ろめたさから蓮の告白を断った仁菜子ですが、蓮への想いを忘れられず教室で一人になったとき蓮の席に座り、それを蓮に見られて逃げようとしたときに、蓮に通せんぼをされます。蓮の必死な姿に高揚感がありました。

 

 今回『ストロボ・エッジ』を読んだのは2回目ですが、やはり自分の好きな作品であることを再確認しました。これ以降もまた咲坂伊緒先生の作品を読もうと思っていますが、それがとても楽しみになりました。

 

 次回は咲坂伊緒アオハライド』の予定です。