いののすけのブログ

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百合入門

 ここ半年くらいで百合の世界にハマってきたので、読んだり観たりした作品を振り返りつつ、百合について思うことを言葉にしてみようと思います。(以下ネタバレを含みます。)

 

 まず百合とは何かという定義を示すのは難しいです。個人によってさまざまだとは思いますが、とりあえず女の子同士の特別な関係を描いた作品であると定義しておきます。この特別というのが幅広く、恋愛まで到達するのか、あるいは友情を超えた関係が結ばれていれば恋愛まで必要ないと考えるのか、これが人によって異なる非常に難しい問題です。ですので定義の話はこれくらいにして、とりあえず最初の定義に基づいて以降の話を進めていきます。

 なぜ百合作品を読もうと思ったのかというと、読む作品のジャンルを広げたかったからです。そもそも自分はラブコメが好きで、のちに少女漫画も読むようになっていって、今では恋愛が絡んでくる作品をよく読んでいます。ただ読む作品は男女の恋愛が多く、それはそれで面白く読んでいるのですが、このままだとマンネリ化しそうな感じがありました。そこで違うジャンルのものを読もうとしたのですが、アクションやサスペンスのような類のものはなんとなく読む気になれず、ほかにも読みたいジャンルが見つかりませんでした。ただその中で百合はかねてから触れてみたい思いがあり、これがいい機会だと思って読んでみることにしました。これが百合に入門した動機です。では以下で読んだ作品を振り返ってみたいと思います。

 

1.「ご注文はうさぎですか?」(Koi、WHITE FOX

 おそらく百合要素のある作品を観たのは「ご注文はうさぎですか?」が最初だと思います。ストーリーが大きく展開するわけでもないいわゆる日常系の作品ですが、基本物語性のあるものを好んでいた自分にとっては、こういったほのぼのとしたものでも楽しめるということに気づいた作品でした。ちょうど就活で苦しんでいたこともあり、かなり癒されていました。ごちうさが百合かどうかは意見が分かれるところだとは思いますが、女の子同士の関係を描いた作品を楽しむ端緒として、ごちうさは自分にとって大きな作品となりました。

 

2.「このはな綺譚」(天乃咲哉Lerche)

 次に観たのは「このはな綺譚」です。登場人物がケモミミなので、ファンタジーという分類もされています。ちょうど近い時期にごちうさを観ていたのと、当時好きだった声優加隈亜衣さんが出演者の一人だったので、観ました。こちらもほのぼのと癒されたのですが、柚と皐、蓮と棗の関係がかなり特別な関係ともなっていたので、百合要素が強かった印象があります。とはいえ当時はそこまで百合というのは意識しておらず、こういう描写もあるのだという程度に考えていました。

 

3.「ハッピーシュガーライフ」(鍵空とみやき、Ezo'la)

 次に観たのは「ハッピーシュガーライフ」です。この作品は当初サイコホラーという触れ込みで見て、ホラーは苦手なのですが、怖いもの見たさで視聴しました。直接的な描写がなかったこともあり、無事に視聴を終えることができたのですが、かなり重たい作品でした。愛のためならどこまで許されるのか。真実の愛とは何か。視聴後は心に重くのしかかってきました。ただ重たい作品は好きなため、今では好きな作品の一つとなっています。百合に関して言うと、最近読んだ「百合の世界入門」というムックの中で、百合作品として紹介されており、そこでこれも百合かと気付いたため、視聴当時は百合作品とは意識していませんでした。

 

4.「フラグタイム」(さと、ティアスタジオ)

 「ハッピーシュガーライフ」を観てから1年くらいラグがあって、次に百合に触れたのは「フラグタイム」です。予告編を見て気になったので映画館まで観に行きました。この作品が公開される時期がちょうど百合に触れたいと思っていた時期と重なっており、「フラグタイム」が意識して最初に観た百合作品となりました。物語は森谷が止めた時間の中で村上のスカートをめくり、そのときなぜか村上は動けて時間停止の秘密がばれる、というところから始まります。そして止めた時間の中で二人でいろいろなことをして関係が深まっていきます。こういった秘密の時間の共有というのはドキドキする設定で、その中でお互いに惹かれあい、「好き」の意味を知っていくという展開で、ベタかもしれませんがとても好きな作品となりました。下着を覗くというのも百合だからこそ受け入れやすい設定で、百合を深めようとするきっかけにもなりました。

 

5.「citrus」(サブロウタ一迅社

 ちょうど「フラグタイム」観た前後で読んでいたのが「citrus」です。この作品は義理の姉妹という少し背徳的な設定から、最悪な出会いから徐々にお互いのことが気になっていくという展開、登場人物のギャップや魅力的な個性、そして純粋な愛と見どころが多く、読んでいてとてもドキドキしました。まだアニメは観れていないのですが、そのうち観たいと思っています。

 

6.「やがて君になる」(仲谷鳰KADOKAWA

  「Citrus」の次に読んだのが、「やがて君になる」です。この作品ではまず「好き」という気持ちがわからない主人公・小糸侑を、悩み相談に乗った生徒会の先輩・七海燈子が好きになるところから始まります。そこから「好き」という気持ちをめぐって二人の物語が進展していきます。この「好き」をめぐっては二人が川で向き合うシーンが2巻と6巻にあり、そこがまさに「やがて君になる」を象徴するシーンとなっていて、とても印象に残っています。この作品の魅力は、「好き」をめぐる葛藤や気持ちの揺れにあります。おそらく登場人物が男女であればもし互いに特別な気持ちを抱けばそれは恋になるのであり、好きになることに違和感を抱くことはないはずですが、百合となると「好き」というのはどういうものかという葛藤が発生し、またその葛藤を自然なものとして受け入れやすいというのがありました。そのテーマが一貫しているからこそ、「やがて君になる」はとても魅力的な作品となっていると思います。個人的には現在百合作品の中でNo.1はこの「やがて君になる」であり、すごく好きな作品となりました。

 

7.「あの娘にキスと白百合を」(缶乃、KADOKAWA

 「やがて君になる」の次に読んだのが、「あの娘にキスと白百合を」です。この作品はとにかく登場人物が多く、1巻ごとにメインが変わるオムニバス形式の作品です。登場人物によって関係の在り方が変わり、かつそれぞれが交差することもあり、全10巻の中でさまざまな百合の関係を楽しめる作品でした。

 

8.「エクレア」シリーズ(オムニバス、KADOKAWA

 「エクレア」シリーズは副題に「あなたに響く百合アンソロジー」とあるように、様々な漫画家の百合作品を集めたシリーズです。恋に発展するもの・しないもの、ハッピーエンドとそうでないもの、ギャグからシリアスまでとにかく多様な百合の作品に触れられました。個人的には「やがて君になる」が大好きなので仲谷鳰先生の作品がとてもよかったのですが、ほかには唯野影吉先生も好きだと感じ、印象に残っています。

 

9.「桜Trick」(タチ、スタジオディーン

 「エクレア」シリーズを読むのと並行して観ていたのが「桜Trick」です。この作品はキス描写がとても多く、春香と優が隙あらばキスをしているので、とても刺激の強い作品でした。普段はアニメを複数話連続視聴することは普通なのですが、「桜Trick」はなかなかそれができませんでした。最後の2,3話はイッキ見したのですが、終わった後爆発しそうな気分になりました。それでもやはりキスはドキドキするものがあり、楽しめた作品でした。

 

 以上が私が触れた百合作品の一覧です。これらを踏まえて最後に今感じる百合の魅力をまとめてみます。

 百合は最初の定義でもあげたように女の子同士の特別な関係を描いたものであり、基本は二人の女の子の関係の場合が多いのですが、百合の魅力はその関係のあいまいさ、多様さにあると思っています。「やがて君になる」のところでも触れましたが、男女のラブストーリーであれば相手に好意がある=恋となり、どう相手を振り向かせるかとか、ふとした瞬間にドキドキしたりとか、そういった展開が多くなると思うのですが、百合となると異なってきます。百合だと相手に好意を抱いてもそれが恋には直結せず、関係が深まっていくうちに恋と自覚したり、そもそも「好き」の性質が定まっていないこともあります。そのようなあいまいな状態でも物語が成立する、それが百合の魅力だと思います。その点からいうと「好き」を中心に展開していく「やがて君になる」や恋かは分からなくとも相手を特別と感じ、キスを繰り返す「桜Trick」はまさに百合ということが存分に生かされた作品と言えて、そういった作品に触れていくうちに百合を好きになっていったと感じています。

 また百合だと「好き」の感じがそれぞれ異なっているとも感じます。これは「あの娘にキスと白百合を」や「エクレア」シリーズを読んでいた時に強く感じたのですが、言葉では分類できないほどの「好き」の形が百合にはありました。言葉にはできないのですが、温度差というか、感じ方というかが作品ごと、カップルごとに異なっていた感じを強く受けています。恋という一語では包括しきれないようなたくさんの特別があり、それらに触れていくことでも百合を好きになっていきました。

 

 そういうわけで百合の沼につかり始めている私ですが、かなりはまってしまっているので、これからも百合作品を読んだり観たりしていきたいと思っています。とりあえずはムック本「百合の世界入門」(玄光社、2016年)を読んで、読みたい百合作品がそれなりに出てきたので、それらを読んで百合の世界を深めていきたいと考えています。また気が向いたら、百合のことをまとめようと思います。ただ一つだけ、百合豚にはならないように気をつけます。